2008.09.17 読書の秋
さわやかな秋晴れ。空気も清々しく、今週はじめから長袖シャツにしている通勤スタイルも心地よい。朝、ルーティンの集計業務をこなしていると、後ろに立った社長がひとこと、「伊藤さん、きのう絢香観にいったんだって・・・」あちゃぁ~っ、バレてる。「誰と行ったんだろうねぇってひとしきり盛り上がっていたんだよ」と追い打ち。ますます身が縮む思い。
しかし、「いつもどうやってチケットとってるの? 絢香ってチケットとるの大変だったでしょ・・・」から、公衆電話のほうがつながりやすいとか、地方からの電話のほうがつながりやすいとか、昔、まことしやかに語られたチケットをめぐる都市伝説へと話が移っていく。もっとも、社長は叱責するために声をかけてきたわけではないんだから、身を縮める必要はないんだけどね。
本日も横浜で打ち合わせ。終了は19時を回っていたが、きょうは直帰せず、会社に戻ってくる。往復の電車に乗っている時間は読書が進む。「読書の秋」の9月、先週今週で、日明恩の「そして警官は奔る」、あさのあつこ「NO6 #4」、そして辻内智貴の「セイジ」を読んだ。
日明恩の警察を舞台にしたシリーズ第2弾も、文庫で700ページ近い大作。「鎮火報」に衝撃を受けて以来、期待の作家だけど、毎度毎度大作では、上梓されるペースが空くだろうなぁ。だから、この1冊を大切に読もうという気になる。シリーズ1弾の「それでも警官は微笑う」は、最後、ちょっと息切れというか、大作ゆえの散漫さも気になったが、今回は、最後までぶれなかったという印象。
警察という組織の中のドロドロとした確執、社会問題、個性的なキャラクター、ドキュメントのようなリアルなシチュエーションなどが、今回もぎゅうぎゅうに詰め込まれている。「読み応え」というのが最もふさわしい表現かも。無骨な武本刑事の座右の銘もお気に入りのフレーズだ。
「後悔という字は後で悔やむと書く。どうせ悔やむのならば、何もしなかったことを悔やむより、やってしまって悔やむ方がましだ。やるだけやって、その結果悔やんだとしたら。二度としなければ良い。泣いても喚いても明日は来る。明日を待つんじゃない、自分から迎えろ」
けさの往きの電車で読み終えた辻内智貴の「セイジ」は、大げさにいえばこれまで歩んできた人生をしみじみと振り返らせる力が行間に散りばめられていた。表題作の「セイジ」は、生きる力を失いかけていて虚無の底にいる者に、凄烈に「切り取る」行為を目の前に突きつけることで、深い底から引っ張り上げる。これはこれで衝撃的だったが、個人的にはもう1つ収められた「竜二」のほうに惹かれた。
身体が大きく、力があって、誰からも慕われる「ガキ大将」の兄、憧れであり自慢でもある。しかし、どうあがいても兄のようにはなれない。そんな思いを持つこども時代、兄を筆頭に遊びに出かけた先で、小さな流れを飛び越えられずケガをしてしまう。すぐにうちへ連れ帰り、手当てや医者への報せなどでここでも兄に借りというか負い目を感じることに。結局、その流れを飛び越すことができないままに大人になってしまう。
大人になれば、そんな流れの幅など一跨ぎかもしれない。でも、それをしなければ、こどもの時の「飛べなかった」「越えられなかった」という思いは一生そのままだ。わたし自身も、あの時こうしていたら、ああしていたらという悔いもある。あの時1歩を踏み出していたら・・・。
そんな悔いと負い目と、勝てなかったという敗北感のようなものから、自堕落な生活を40過ぎまで続けてしまったことからくるさらなる虚無感。その「竜二」が残したもの・・・。けさの副都心線、ドアの前に立ちながら最後の数ページを読んでいたのだが、不覚にも涙がほほを伝い落ちた。
その中でちょっと共感したくだり。(作者の辻内智貴は1歳年下だ)
「・・・・ツマラナイ世の中になったものだ。ふだん思ってもいないそんな事が、ふと思われたりすることが有った。ジョン・レノンの「イン・マイ・ライフ」を、ストーンズの「ルビー・チューズデイ」を、吉田拓郎の「今日までそして明日から」を唄いながら、私は、そこで大声を上げて泣いてしまいたい様な、なぜだかそんな気がする事さえ有った。」
あしたから、お天気は下り坂らしい。台風が近づいているようだ。いくら「読書の秋」とじゃいっても、雨に降り込められて部屋で読書というのはちょっといただけないなぁ。
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